館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技

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館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技
日時:2012.8.19、2012.8.26
場所:東京都現代美術館
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 ものを作る人はみんなみておいたほうがいいんじゃないか?と言えるほど、行って良かった展覧会だった。珍しく二回も行った。一回目はあまりの濃度にエネルギー全部持っていかれてしまって、もともとメインで予定してた『Future Beauty 日本ファッションの未来性』に行けずに帰ってきた。翌週はFuture Beautyのみの予定だったけど、残しておきたかった成田亨の文章を写したかったのもあり再度。

 最初の展示「人造 原点Ⅰ」でまず心を持っていかれたのは、小松崎茂のドローイング。60〜80年代のプラモデルのパッケージの絵とか、僕の年代くらいであれば、子供の頃玩具屋さんにいっぱい置いてあったと思うので「おぉ、懐かしい!」とノスタルジーに浸れる絵だろう。プロダクトデザインを勉強してた時、小松崎さんの絵のテイストをコピックレンダリングでもう少し近代的に落としこんだ感じにできんかなと色々試してみてたけど、結局納得いく感じにはできなかったのを思い出す。
 他に気に入ったのはマグマ大使のロケットの模型と、マイティ・ジャックの作品全般。マイティ・ジャックは全然観たことないので観てみたいと思う。

 次の「超人 原点Ⅱ」の始めにあった成田亨の『みやころさん』90年秋号に掲載されていた文章にすごい感銘を受けた。図録に載ってるといいなと思って買ったけど載っていなくて、一度はまあいいかと思ったけど、やっぱりあの文章は自分の中に残しておきたいと思って、翌週もう一度書き写しに行った。成田さんはドローイングもすごく良い。
 ウルトラマンシリーズの乗り物模型を集めてたコーナーも良かった。赤とシルバーの機体。乗り物のドローイング。その後、ヒーロー達のマスク、着ぐるみ、ジオラマ模型。ガッシュコピック、FRP、金属、ラテックス、バルサとか、最近模型作りはめっきり離れていて全然使わないので、懐かしい素材で自分では全然できないだろう細部まで作りこまれた造形物が次々と並べられていると鳥肌が立つ。基本的に僕は、何にしても人の手が入って細部に気を配られたものに出会った時や気づいた時に感動をする。結局行き着いたところ、アートとかデザインとか作家的とか商業的とかそういう枠は関係ないらしく、映像とかウェブとかも同じで、只々こんなところまで気を配って手を入れてるのか!ということに感動する。この展覧会はそういう造形物が一同に集まってる。

 『巨神兵東京に現る』は、まず完成映像を観てから、その解説というような流れで展示は進む。個人的に観る前にちゃんと思っておきたかったなというのが、どうやらほんとにCGはなく、アナログ技術で構成されているということになっているっぽい(自分の中でCGと特撮の完全な区切りには自信がないけど)。そして様々継承されたり、編み出される特撮の手法が本当にいちいち面白い。
 正直見てる側がCGかどうか判断できないレベルだと、実はあんまり意味ないんじゃないかなと思ったりもするんだけど、メイキングをみた感じだと何より作っている側のメンバーのモチベーションとか経験として詰まっていく思いとかが全然違うんじゃないかなと感じた。ものを作ることの感覚みたいなのが本当に身に染みていくんだろう。1〜4次元まで映像という目的に向かって作られるものづくり。途中の作品は全て骨肉。

 最後に下のが書き写した成田亨の文章の序文。この先も興味深いことが書かれていて、色々考えさせられる。

” 私は、人間は進化しないものだと思っています。進化しないで変化していくものだと思っています。食を求めるために働き、恋に喜び、失恋に泣き、友と語り、嫌な奴と働き乍ら、一人一人は成長していきますが、人類そのものはメソポタミアの文明開化以来同じことを繰り返しています。
 しかし科学は進歩します。日進月歩、昨日のものは無価値です。科学技術の進歩は生活を変えます。革新的な技術の発達の中で、人間は人間全体の発展進歩だと錯覚して、ボケてゆくのです。堂々として生きる本来の人間の姿を忘れてゆくのです。
 哲学は鳴りをひそめ、宗教も静まり、コンクリートとガラス状の現代建築に追い出された彫刻はディスプレイ化し、絵画はデザイン化して、生存の場を確保しています。”